ペット東洋医学アドバイザーによる「犬の薬膳」基礎知識の解説。
今回は薬膳を実践する上で、欠かせない知識「食物の薬効=五味(ごみ)」「帰経(きけい)」を取り上げます。
薬膳では、全ての食物に何らかの「薬効」があると考えます。この薬効を犬の体調、体質に併せて使い分けるのが基本です。
薬効の基本 | 五味(ごみ)
薬膳では食材一つ一つに薬効があると考えます。その薬効を示す指標の一つが「五味」です。
五味は「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹」の5つです。なお、これはあくまでも薬効について表したもので、実際の食べた時に感じる「味」とは異なる場合があるので注意が必要です。
五味は五臓に対応する=帰経(きけい)
五味はそれぞれ、五臓との関連が深いと考えられています。例えば「甘味」は「脾=消化器」に作用し、胃腸の働きを整えると考えられています。
「五味」によって五臓のどれに作用するか?を理解することは、犬の薬膳メニューを組み立てる上で大切です。
五味がどの臓器に作用を及ぼすか?を表したものを「帰経(きけい)」と呼びます。
五臓・五味の対応表=帰経
酸味 | 肝 | 脱落症状を収める、体液を生じる | 酢 |
苦味 | 心 | 熱を冷ます、便通を良くする、解毒、水分代謝の調節 | 苦瓜 |
甘味 | 脾 | 疲労回復、虚弱改善、胃腸の機能回復、痛みを和らげる | 穀類・果物・ハツミツ |
辛味 | 肺 | 体を温める、気血の流れを良くする、痛みを止める | 生姜 |
鹹味 | 腎 | しこりを柔らかくする、便通を良くする | 昆布・のり |
帰経は何故、大切か?
便秘を例にとって解説します。
水分不足で便がカチカチになってしまうタイプの便秘を「薬膳」ではどう考えるか?
この場合、便秘が起こっている「大腸」に潤いを補い、便を固くする原因を取り除くようメニューを組みます。
バナナは五性が「寒」、五味は「甘」、帰経は「脾・胃・大腸」です。
「寒性」は毒を排泄し、便通を良くする薬効を指します。作用は強めです。「甘味」は消化器全般の機能調整の薬効を指します。その薬効が働きかける先=帰経は「脾・胃・大腸」です。
つまり、バナナは大腸に働きかけ、便通を良くする薬効が期待できる食物ということです。犬のおやつにバナナを与えることで、便が硬くなるのを防ぎ、便秘解消に役立てます。
もう一つ例を挙げます。空気が乾燥した影響で空咳が続く犬に、薬膳の視点で体に良い食材を選ぶとしたら、何が最適かを考えてみましょう。
梨は五性が「涼」、五味は「甘」「酸」、帰経は「肺・胃」です。
「涼性」は「寒性」同様、便通を良くする薬効を持ちますが、作用はより穏やかです。「酸味」は津液を生じる=体に潤いをもたらす薬効を指します。その薬効が働きかける先=帰経は「肺・胃」です。
梨の薬効は「肺」に作用し、津液を生じる=潤す作用なので、乾燥によるダメージからくる空咳を鎮めるのに効果があるとされています。
このように、その薬効が「五臓のどこに作用するか?=帰経」を考えながらメニューを組むことが、食材の薬効を最大限に引き出す鍵となります。
食物の五味・帰経は書籍を参考に
食物の個別の五味や帰経は書籍にまとめられています。下記の書籍が使いやすいので興味のある方は1冊お手元に置くことをお勧めします。