ペット東洋医学アドバイザーによる「犬の薬膳」基礎知識の解説。今回は薬膳メニューを考える際に欠かせない「五臓」の考え方について取り上げます。
犬の手作りごはん薬膳は、犬の体質、体調、年齢に合わせてメニューを組むのが基本です。
その際、体の中のどの部分に不調があるか?を考える方法として「五臓」を知ることが挙げられます。
薬膳で考える「五臓」
五臓は以下の5つの臓器を指します。
- 肝
- 心
- 脾
- 肺
- 腎
薬膳ではこれらの五臓に、現代の生理学で分かっている機能よりもより範囲の広い働きがあると捉えます。
これについて個別に解説していきます。
尚、「脾」は脾臓のことではなく胃腸などの「消化器全般」を指します。薬膳初心者の方にはここが理解しにくいポイントになるので、注意が必要です。
肝
肝は「肝臓及び肝機能全般」「精神の安定」「血液の貯蔵」という働きを担うと薬膳では考えています。
肝の働きがアンバランスになると精神が安定せず、脇腹が痛む、不眠などの症状が現れます。
また肝の不調は「爪」に現れると考えられています。肝機能が低下すると爪のツヤが失われ、割れやすくなるとされています。
肝の働きを助ける食材
そば・菜の花・えんどう豆・みかん・オレンジ
心
心は「心臓及び循環機能全般」「意識活動を正常に保つ」「精神の安定」を司ると考えられています。
この場合の「精神の安定」は集中力が高く、頭の回転が早い状態を指します。
心に不調があると、外部からの刺激への反応が鈍くなる、顔色が悪くなるという症状となって現れます。
犬の場合、全身が毛に覆われているため顔色はわかりませんが歯茎の色、唇の色が薄い、という箇所に症状が現れます。
犬の歯茎の色を定期的にチェックすることで、血行状態を確認できますのでぜひやってみてください。
心の働きを助ける食材
米・小麦・にんじん・ほうれん草・卵・牛乳
尚、ほうれん草は犬の結石症の原因になるのでは?と心配される方がいらっしゃいますが、ほうれん草に含まれているシュウ酸カルシウムが、直接結石症の原因になるわけではありません。
これについては「犬にほうれん草ってあげてもいいの?【初心者向け】」という記事に詳しく書きましたので、参考にしてください。
脾
脾は飲食物を受け入れる消化器全般を指します。脾臓のことではない点に注意が必要です。
脾は食物を消化し、栄養素を吸収する生命を支える大切な臓器として扱われます。
脾は「栄養を消化吸収し、筋肉と手足を丈夫にする」「全身に栄養を送る」働きを持ちます。
脾に不調があると、全身の栄養状態が悪くなり、めまい息切れ、痩せるなどの症状が現れます。下痢や食欲低下、むくみが起こる場合もあります。
脾の働きを助ける食材
穀類・芋類・キャベツ・肉類・イワシ・タラ・カツオ・ハトムギ・とうもろこし・豆腐・生姜・大根・オクラ
肺
肺は外部から直接空気を取り込む臓器です。その分、季節の変化、特に秋の乾燥、冬の寒さに対して敏感です。
肺は呼吸を司り、生命活動を維持します。
また、薬膳では肺が栄養や体液を全身に送り出すと考えています。そのため、肺の状態が良いと被毛に十分に栄養が行き届き、状態が良くなると考えます。
肺の状態が悪いと、咳、喘息、息切れなどの症状となって現れます。
肺の働きを助ける食材
穀類・山芋・肉類・鯖・イワシ・カツオ・タラ・白ごま・卵・豆乳
腎
腎は「腎臓および腎機能」「生命・成長・発育・生殖エネルギーの貯蔵」を担うと考えられています。
現代生理学で考えられている腎臓の働きより、より広範囲の役割を担っていると薬膳では捉えています。
人は老化や成長との関わりが深い部位です。腎に不調が起こると足腰のだるさ、耳鳴り、耳が遠くなる、白髪、むくみ、排尿障害の形で現れます。
老犬のケアを考える上で「腎」の働きを良くすることは欠かせません。詳しくは「薬膳で考える「老化の原因」とは? | シニア犬の薬膳」という記事に詳しく書きましたので、併せて参照してください。
腎の働きを助ける食材
五臓の生理機能を理解し、メニューの組み立てに役立てよう
薬膳で考える「五臓」の役割は、現代医学の生理学よりも幅ひろく捉えられています。
その特性を理解し、犬の体調に合わせて五臓の働きを助ける食材を取り入れてみてください。