ペット東洋医学アドバイザーによる「犬の薬膳」基礎知識の解説。
今回のテーマは、生理学にあたる「気・血・水」を取り上げます。
中医学の基本の「生理学」
犬の薬膳は「犬の体の状態」に合わせるのが基本ですが、この「体の状態」を知るために「気・血・水」を理解することが必須です。
この記事では犬の薬膳初心者向けに解説していきます。
気(き)
気は生命活動を営む上で欠かせない、生理・代謝活動と考えることができます。気には以下の働きがあると考えられています。
- 生理機能を促進
- 体を温める
- 病気から体を守る
- 体液が漏れ出ないよう管理する
- 食物をエネルギーに変え、体内で利用し、排泄する
- 臓器や組織に栄養を行き渡らせる
この「気」の流れが滞った状態を「気滞証(きたいしょう)」、「気」が不足した状態を「気虚証(ききょしょう)」と呼びます。
血(けつ)
血は血管を流れる赤い液体のことを指します。いわゆる「血液」ですが、薬膳では現代医学で考えられている血液よりも、より広範囲の働きを「血」の作用と捉えています。
血には以下の働きがあると考えられています。
- 臓器・組織に栄養を供給し、潤す
- 精神を安定させる
血は全身に栄養と水分を届けると同時に、精神の充実、意識を明晰にする働きを担うと考えられています。
「血」が質・量ともに不足した状態を「血虚証(けっきょしょう)」、「血」の流れが滞り起こる体の不調を「血瘀証(けつおしょう)」と呼びます。
水(すい)
「水」は体内の正常な水分を指します。胃液、腸液、汗、涙、唾液など。
「水」は食事によって取られた飲食物から分離されて作られます。水は必要に応じて体内で利用され、不要分は尿・便などから排泄されます。
水には以下の働きがあると考えられています。
- 皮膚・被毛・臓器を潤す
- 関節を潤し動きそなめらかに保つ
- 耳・目・鼻・喉を潤し、保護する
- 便・汗・尿などとして老廃物を排泄する
「水」が不足すると「津液不足証(しんえきふそくしょう)」、水の代謝が滞ると「水滞」となります。
犬の薬膳は「体の状態」に合わせるのが大切
薬膳は体に合わせて食材を選ぶオーダーメイドの食事です。
愛犬の健康状態を知りためにはいくつかの指標がありますが、今回は薬膳の生理学「気・血・水」の視点をご紹介しました。
初心者の方はまず、愛犬の「気・血・水」の状態をチェックし、体の状態を把握することがスタートです。
慣れてきたら、複数のチェック方を組み合わせてみよう | 五臓・季節
愛犬の体調チェックにはこの他に「五臓」の状態に合わせる考え方、「季節」に合わせる場合などがあります。
必要に応じてこれらを組み合わせることで、より犬の体の状態にあった薬膳メニューを組むことができます。