ペット東洋医学アドバイザーによる「犬の薬膳」基礎知識の解説。
今回は薬膳を実践する上で、欠かせない知識「食物の持つ性質=五性」を取り上げます。
薬膳では食材はすべて「薬効」を持つと考えます。その薬効を示す分類の一つに「五性」があります。五性は「寒」「涼」「平」「温」「熱」の5種類です。
五性 | 分類と性質
「寒」「涼」は炎症を鎮め、毒を排泄し、便通を良くする、利尿の薬効を指します。働きの強さは「寒>涼」です。
「温」「熱」は体を温め、痛みを和らげる、気血の循環を良くする薬効を指します。
血行が良くなることで臓器や組織の活動が活発になり、正常化されます。代謝活動が上がることも期待できます。働きの強さは「熱>温」です。
「平」は体へ与える影響が穏やかで、体の熱や水分を調和させる薬効を持ちます。どのような体質にも使え、基礎体力をつけたい時に用いられます。
寒性
発熱、喉の渇き、便秘の改善などに用いられます。
津液不足証、陽熱体質に適しています。季節では夏季の体温調節に。
涼性
炎症を鎮める働きを持ちますが、作用は「寒性」よりも穏やかです。微熱、のぼせ、火照りの改善、熱中症の予防。夏季の体温調整にも。
気滞、津液不足証、陽熱体質に適しています。
温性
体を温め、血行を促進します。「熱性」の食物よりは穏やかな薬効を持ちます。疲労回復、食欲不振の改善、痛みを和らげる、気血のめぐりを良くする働き。
気虚・瘀血・水滞・気滞体質に。
熱性
体を温める作用が最も強いのが「熱性」の食物です。
冷えや寒さを改善し、痛みを取り除く効果があります。気血のめぐりを良くし、痛みをとります。冷えによる下痢の改善に。
陽虚体質の食事に。
熱性の食材はスパイス類(山椒・胡椒・唐辛子など)が多く、刺激が強く、犬の手作りごはんには不向きです。
食べた瞬間、体がカッと熱くなり、汗が出るようなスパイス類をイメージすると「熱性」の食べ物が理解しやすいと思います。
犬体の冷えをとり、血行を良くしたい場合は穏やかな「温性」の食品を用いることで、十分効果が期待できます。
平性
作用が穏やかで、毎日摂取しても問題がない食物です。私たちの口にする食物の多くが「平性」の食物です。体にエネルギーを補い、滋養します。
体質に合わせて「五性」を使いこなそう
それぞれの体質には向いている「五性」の食物があります。下記の一覧表にまとめたので参考にしてください。
寒性 | 津液不足証・陽熱体質 |
涼性 | 気滞、津液不足証、陽熱体質 |
平性 | 全ての体質 |
温性 | 気虚・瘀血・水滞・気滞体質 |
熱性 | 陽虚体質 |
各体質についてはこちらの記事に詳しくまとめて、解説しています。
気虚・血虚・気滞・瘀血・水滞・津液不足について
「気・血・水」についての不調はこちらを参考にしてください。